細雪~倚松庵

 神戸市東灘区の住吉川右岸に位置する倚松庵は谷崎潤一郎の細雪のモデルとなった家としてよく知られている。谷崎潤一郎は関東大震災直後の大正12年に関西に移住し、昭和19年熱海西山の別荘へ疎開のため居を移すまで足掛け20年以上を関西で過ごしているが、その間、十数回以上も転居を重ねた中でこの倚松庵には昭和11年から18年までの7年間を過ごしており関西における彼の住まいの中では最も長く住んだ家となっている。

 細雪は昭和15年に執筆が開始され戦中戦後の中断を挟んで昭和 23年に完成しているが、この倚松庵は幸子の芦屋の住まいのモデルとなっており、今もほぼ作品に描かれたままの佇まいに接することができるという意味に置いて非常に貴重であり細雪ファンのみならず一度は足を運んでおきたい場所のひとつとなっている。
 ちなみにこの倚松庵はもともと現在の場所よりも約150m南にあった。平成2年に脇を走る六甲ライナー魚崎駅建設の際に現在の場所に移築されているが、移築の際に耐震補強がなされたため阪神大震災にも耐え震災以降、住吉川沿いに残る唯一の伝統的日本家屋となっている。

 この倚松庵は作中でも詳しく猫写されている昭和12年の阪神大水害の折には最も被害が甚大だった住吉川に面していながら右岸の自然堤防上にあったため浸水にあわず、また太平洋戦争末期の神戸大空襲の際にも住吉川左岸が焼失してしまったにかかわらず奇跡的に被害を免れている。その意味では強運を持った建物と言えるのかもしれない。

【 アルバム 】

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20140525_30.jpg神戸市東灘区の住吉川右岸に面した倚松庵は、20140525_03.jpg谷崎潤一郎の細雪のモデルとなった家ということでよく知られている。20140525_11.jpg間取りも含めて作品に描かれたままといっていいその佇まいは、20140525_22.jpg愛読者にとってぜひとも一度は訪れてみたい場所の一つとなっている。20140525_05.jpg一階の応接間は広さ十畳。食堂に続く三枚の引き戸を取り払い、
20140525_26.jpg山村舞のお浚い会が催されたところでもある。20140525_06.jpg食堂の食卓は谷崎家の人たちが実際に使用されていたものだ。20140525_08.jpg掃き出し窓も作品に描かれたままの西の部屋。盛夏の折には、20140525_07.jpg三姉妹が涼を求め、また雪子が妙子に爪を剪ってもらう場面が描かれる。20140525_09.jpg浴室は伝統的な五右衛門風呂。妙子が応接間まらの戸障子を少しずつ開けラジオの新響の演奏を聞きながら入浴していた様子も容易に想像できる。
20140525_24.jpg応接間に面したテラス。庭には桜、平戸、小手鞠、ライラック、アオギリなどなど、20140525_14.jpg作品中に登場している庭木が可能な限り再現されている。ちなみに倚松庵の南西隣には当時、20140525_23.jpgシュルンボムというドイツ人が住んでおり、作中のシュトルツ一家のモデルとなっている。20140525_10.jpg続いて階段を上り二階へ。20140525_12.jpg二階、幸子の部屋。手摺り囲いの張り出しが付いた大きな窓が二面にとられていて明るく瀟洒な印象だ。
20140525_15.jpg「こいさん、頼むわ」・・・三姉妹の会話が今にも聞こえてきそう。ちなみに調度品は復元ではないとのことだ。20140525_16.jpg二階六畳の悦子の部屋。幸子の計らいで芦屋への滞在時には雪子も悦子と同居した。20140525_18.jpgここには春琴抄の自筆原稿(複写)など谷崎と当時の倚松庵を偲ぶ品々の展示スペースとなっている。20140525_20.jpg二階南端のこいさんの部屋。雪子の嫁入道具万端がきらびやかに飾られる中、20140525_17.jpg当座のものを風呂敷包みに取りまとめ三次との新居へ帰ってゆく妙子。何とも忘れがたいラストシーンだった。
20140525_19.jpg倚松庵の真横を走る六甲ライナー。20140525_02.jpgもともと倚松庵は現在地から約150mほど南、現在の六甲ライナー魚崎駅脇辺りにあった。20140525_29.jpg平成2年、六甲ライナー建設時の道路拡張によって現在地に移転、保存されることになった。20140525_04.jpgその際、泰新補強か施されたため、その後の阪神大震災でもほとんど被害がなかったらしい。

【 DATA 】

   〒658-0052 神戸市東灘区住吉東町1-6-50 TEL:078-842-0730 
     土日のみの開館(年末年始は休館)、10:00~16:00
     入館料/無料
  Link 倚松庵